古いInternet Explorerのサポート終了による今後のブラウザ対応について

今年(2016年)の6月に、JavaScriptライブラリ「jQuery」のバージョン3.0が公開されました。それまでは、バージョン2.x〜とは別にInternet Explorer(以下 IE)の8以前に対応したバージョン1.x〜も用意されていましたが、1月のマイクロソフトによるIE8のサポート終了に伴って、3.0からはこれらのバージョンが統一されました。

jQueryやマイクロソフトのサポート終了によって、今後のサイト制作の中での古いIE対策はますます比重が小さくなっていきます。当方では2012年頃、Web制作の対象ブラウザからIE6以前のバージョンを外しました。そして来年、2017年からはIE8以前のバージョンも外していこうと思っています。ただし、まだIE8のアクセスが見込まれるサイトもあるのでケースバイケースで対応していきます。

そもそもなぜ古いIE対応についていちいち説明するのか

ウェブサイト制作では、HTMLやCSS(スタイルシート)などの記述言語をウェブ関連の規格「ウェブ標準」に則って扱います。ウェブ標準に則った作法で作成し、ウェブ標準に則った現代のブラウザ(モダンブラウザ)で閲覧するのであれば問題はありませんが、古いウェブブラウザ(レガシーブラウザ)では現在のウェブ標準に対応しておらず、意図したとおりの表示や動作にならない部分が出てきます。

新しい規格に対応していなければその規格を使わなければいいだけですが、規格に対応していても正規とは違った表示や動作になる場合はやっかいです。古いIEは、独自の機能をはじめCSS(スタイルシート)周りのおかしな解釈が豊富にあるやっかいな存在です。バージョンアップごとに改善されてきているものの、IEは伝統的にこういった部分を持っており、最近のバージョン10や11になってようやく気にしなくていいレベルになってきました。

問題の多い「古いIE」ですが、シェアがまだまだ高かった数年前までは無視するわけにいかず、世界中のウェブ制作者が多くの時間を割き悩まされてきました。ブラウザごとの挙動の差異を埋めることの出来るjQueryやBootstrapなどのフレームワークもありますが、そういった便利ツールを使っても古いIE対策は作業のボリュームを大きくしてしまいます。

古いIE対策をやめることで、代わりに新しい規格や技術、サービスを導入しやすくなります。具体的な製作期間や制作費に影響することもあるため、機会があればクライアント様にはご説明させていただいています。また、実際に古いIEのアクセスがほぼ無いサイトでも、クライアント様が確認できる環境が古いIEの場合があります。こういった場合もIE対策についてご説明させていただいています。

古いIE対策をやめたらどうなるのか

昔は古いIE向けCSSハックなどのノウハウもウェブ制作者のスキルの一部でしたが、今はそれほど必要ないし意識していないウェブデザイナーも多いと思います。シェアが極端に低くなった現在では、古いIEの対策をしなくても特別というわけではありません。特殊な場合を除いてはデメリットはほとんどないと思います。

また、対策したとしても、スマートフォンなどのモバイルを優先した「モバイルファースト」の考えと同じくモダンブラウザを優先した設計が基本になるので、古いIEでは「出来る限り似たような表示と動作に努める」に留まったものになると思います。

必ず、というものではありませんが、思いつくメリットを挙げてみました。

古いIE対策をやめるメリット

  1. HTMLやCSS、JavaScriptなどのコードが簡潔になる。
  2. 簡潔になったコードにより転送量の削減や描画速度の向上が期待できる。
  3. ページの応答が速くなることでSEO(検索エンジン対策)への好影響が期待できる。
  4. レスポンシブウェブデザインなど、現代にあった設計やデザインが行いやすくなる。
  5. IE対策に費やされてきた費用と時間を節約できる。

速度向上は体感するのが難しいほどの軽微なものでしょうが、ある程度のアクセスがあるサイトでは塵も積もれば山となるかもしれません。一番大きなメリットは「制作の中の大きな苦労が一つ減る」ということに尽きます。

古いIEのアクセスが一定数あるサイトでは、業種や同業他社の対応状況との兼ね合いもありますが、引き続き最低限の表示ができるように対策しておいたほうがいいと思います。